【エッセイ】古い資料を見ていて、20~30年前・・・

2019年07月02日

 古い資料を見ていて、20~30年前、毎年のように本を作っていた頃の私に、ひょっこり出会いました。言っていることは今とほとんど同じですが、料理を作る工程のプロセス写真ひとつにも、編集者がページを割いて丁寧に伝えようとしているのがよく分かります。「聞きたい、見たい、もっと知りたい」と求めている人が、本の向こうに見えていたからだと思います。



20年経って、求める人の姿が変わりました。写真に撮って「ひときわ見栄え良く」が求められます。料理は、手間をかけておいしいことより、「わぁ!すごい!」と誰かに言ってもらえることが大事になってしまったのです。

梅雨入りを前に紫花豆の煮豆を作りました。時間をかけ、アクや渋みを抜き、ふっくらと、大きな大きな親指の先ほどのサイズに仕上げます。そういう私も久しぶりに炊きました。
昔は自分が炊かなくても、まわりの誰かからおすそ分けがまわってくることがあったり、瓶詰めをいただいたりして食べていましたが、スタジオのスタッフさん達でも炊いた経験のない人がほとんど・・・。家に持ち帰っても子供たちの声は「うわぁ~、大きい」とびっくりすることの方が多かったようです。この豆からも「昔・・・」と呼ばれる時代を感じました。
かつて私の母は豆をよく炊いて食卓にあげていました。黄大豆、黒大豆、小豆、金時豆、うずら豆。花豆と呼ばれる白花豆、紫花豆。豆は缶かんに入れて保存し、夏を越すとかたくなるからと、梅雨が来るまでに急いで使ったものでした。
慌ただしい日々のはざま、はやる気持ちをおさえて、じわ~っと豆に寄り添って、豆のご機嫌をうかがいながらコトコトと炊くゆっくりとした時間。ひとときでも家族のことを思い、ゆったりとした時間を持つと、自分が癒され、穏やかな気持ちになっていることに気づきます。
料理セミナーのアンケートにも「今日は癒されましたぁ~」という感想をたくさんいただきます。ぜひ!豆を炊いてください。食べた体も栄養をもらって喜びますよぉ~


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