【白井さんのエッセイ】資料を整理していたら・・・

2020年07月01日

 資料を整理していたら「捨てるに捨てられない・・・」ものがたくさん出てきました。そのひとつが学校で使われているワラ半紙に鉛筆で書かれた20数年前の作文でした。


【白井さんのエッセイ】緊急事態宣言が解除になって・・・

 知り合いの家庭科の先生から「高校2年生の生徒が喜ぶような調理実習して欲しい」とお声がかかり2回だけ教えることになりました。リクエストは「手軽に作れて教科書には載っていないような料理」。「生徒が喜ぶ実習」という言葉に私の心はワクワクしました。
何か特別なものをと、当時の粉チーズといえばこれ!みたいなキャップ付きの筒に入ったものでなく、ちょっといい塊のパルミジャーノレッジャーノと刃のついたチーズおろしを持っていきました。作ったのは簡単なキッシュを一人ひとつずつ。仕上げに自分で削ったチーズを数枚、小さなキッシュにかけて焼きました。教室に広がるいい匂いに、みんなの歓声があがります。「アツアツを今、立ったまま食べていいよ」「えーっ!ほんと!」。今なら許されない授業ですが、心に残る時間になりました。

そんな実習の後、生徒さんたちに書いてもらった作文が出てきたのです。テーマは「家族が同じ時間に食卓を囲む」。今のことでなくても、昔の思い出や自分の望む未来の風景を書いてもいいよと伝えました。私とキッシュを作ってアツアツを食べておいしかったこと、大事な友達や家族にも食べさせてあげたいというような話し合いもして、授業の最後に書いてくれた作文です。
「お母さんはずーっと働いている。一緒にご飯を食べないお父さんが好きになれない。でも僕は昔一緒に食べていた頃の思い出は覚えている」「おいしいものをみんなで食べるのはすごい事だと思う」文字が薄れて読みにくくなるほど古い作文でしたが、涙が止まりませんでした。今では40歳を過ぎているはずのこの子たちは今どうしているんだろう。お父さんがイヤだった彼も今はどこかでお父さんになっているのかしら・・・。
まだ携帯もない時代、それぞれが自分の文字で自分の言葉で語ってくれた食卓への思い。子供たちはちゃんと家族の様子を観察して見ていました。親の背中が手に取るように伝わってきたことに時を超えて胸がいっぱいになりました。
まさに断捨離の作業中でしたが「これを捨てるようでは豊かな生き方とはいえないな・・・」と思い直し残すことに決めました。


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